人気映画シリーズから学ぶ2代目社長の強み

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2代目、3代目社長として家業を継ぐ場合、家業が持つ経営資源を活用しながら事業を行うことができるという大きなメリットがあります。これは0から起業する場合にはない強みということができます。

 

それでも若い世代が家業を継ぐことについてネガティブな感情を抱いてしまうのは、家業が「古臭い」「斜陽産業」で、家業を継いだとしても先がなさそうという場合もあるかもしれません。

 

しかし、「古臭い」と思われていた家業を継いで、全く新しいものにアップトゥデイトした例もあります。そのヒントが「007」シリーズにあります。

 

「時代遅れ」になった人気シリーズ

「007」シリーズといえば映画の歴史の中でも人気のあるブランドといって良いでしょう。

 

ゲスト出演の大御所俳優による現実離れした悪役像と毎回異なる女優により演じられるヒロインとのロマンスや魅力的な秘密兵器など、娯楽アクション映画の王道として多くのフォロワーを生み出し、のちに続く映画に大小の影響を残してきました。

 

しかし、シルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーの台頭を経て、80年代の後半から「ダイ・ハード」や「リーサル・ウェポン」のようなリアリティのある、新しいアクション映画が市場の中心になりつつありました。

 

タキシードを着て悪者と戦い最後は必ず美女と結ばれて終わる、そんなボンド映画の定式が「ダサい」とされ始めたのです。

 

そんな状況の中、89年に公開された「消されたライセンス」はこれまでになくリアリテイを追求した意欲作でありながら、ライバルに押され興行成績も伸び悩むことになりました。もはや「007」シリーズは時代遅れのものと考えられるようになってきていたのです。

 

90年代に入ると予定されていた作品がなかなか撮影に入れず、主演のティモシー・ダルトンも「007シリーズにはもはや興味がない」と宣言する始末。シリーズ存続は風前の灯火という状態でした。

 

そんな中、映画プロデューサーであった父親ロバート・ブロッコリから「007」シリーズの製作を引き継いだのがバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンの兄妹でした。

 

「時代遅れ」の人気シリーズを再生

二人は時代遅れと言われていた長寿シリーズに現代風の視点を取り込むことにしました。

 

その代表的な例がジェームズ・ボンドの上司Mが女性になったことでしょう。これは当時イギリスの情報機関の長官が女性だったことが判明した、という現実を反映したものです。

 

また、ヒロイン(ボンドガール)の人物像も、従来のようなただ美しく、主人公に助けてもらうだけではなく、積極的に主人公の冒険に同行していく意志の強いヒロイン像を描き出したのでした。

 

もちろん、ピアース・ブロスナンという最高のボンド俳優を起用したこともありますが、シリーズ人気は一気に回復し新作を発表するたびに前作の興行収入を超えることになりました。

その後、先代からの悲願であった「カジノ・ロワイヤル」の製作に着手することになりました。これはイアン・フレミング原作のジェームズ・ボンドシリーズの第1作であり、権利の関係上唯一イオンプロによる映像化ができていない作品でした。

改革の集大成「カジノ・ロワイヤル」

この「カジノ・ロワイヤル」の映像化にあたり、これまでのシリーズからの脱却を図る意味で、シリーズのリブート(再起動)として位置づけられました。つまり、これまでのシリーズとはある意味別物ということになります。

 

また、当時流行していた「ボーン・アイデンティティ」的なアクション表現を取り入れたことも特徴と言えます。これまで「007」シリーズはアクション映画の流れを作る作品であったのですが、他の作品からの影響を強く受けるものとなりました。
このことをよく思わなかった昔からの熱心なシリーズのファンも少なくなかったようです。

 

そして最大の物議を醸した変更点が、主人公ジェームズ・ボンドのキャスティングでした。これまでは原作のボンド像に倣って黒髪、もしくは栗毛色の役者が起用されてきましたが、この作品では金髪のダニエル・クレイグが起用されたのです。金髪であるというだけでなく、ジェームズ・ボンドというよりグラント(「ロシアより愛をこめて」に出てくる敵の殺し屋)の方がイメージが近いということもありました。
この起用に関してはファンの反発は凄まじいものであり、アンチサイトや降板を求める署名活動まで発生していました。

 

このように、シリーズの伝統を打ち破るキャスティングなどで物議をかもすものの、「カジノ・ロワイヤル」は新規ファンも取り込み、過去最高の興行収入をあげることに成功したのです。
その後の作品でも批評家と観客の評価の高い作品が続々と公開され、当初はバッシングの嵐だったダニエル・クレイグも「ショーン・コネリー以来最高のボンド俳優」とさえ呼ばれるようになりました。

 

今やボンド映画を古臭いと考える映画ファンはおらず、次のボンド映画はいつ?監督は誰?ボンド役の交代は?ヒロインは?悪役は?と話題がつきません。

 

もちろん、映画というものはプロデューサーだけのものではありませんが、新プロデューサーに交代して停滞していたシリーズが活性化したのは事実です。

 

当初は親の代で作り上げた伝統的なボンド映画の芯は外さずに微妙なマイナーチェンジを図り、時代に即したシリーズへと変更していくことに成功させたのです。

 

後継ぎ社長には、このように「古臭い」家業に新しい考え方を導入することによって、もっと現代的で「新しい」事業に作り変えていくこともできます。
これも0から創業する場合にはない楽しみかもしれませんね。

 

 

PS
古い家業に新しい視点を持ち込んで活性化させる例は何も映画ばかりではありません。
親の代から続く工務店にマーケティングの視点を導入して新たな顧客獲得のパターンを見つけ出した例もあります。
どんな視点かは>>コチラ<<で確認してみてください。

関連記事