公開日:2018/02/02

経営者の想いはどこにあったのか? M&Aの真実

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ある米国企業のフランチャイズ権を買い取った企業の話です。

表向き買い取る方は、その事業の採算性を見越しての判断となっています。

また買い取られる方は今の内に精算しておいた方が後々困らないだろうという事情がありました。

買い取る方の思惑と買い取られる方の裏事情とは・・・

親会社の意向と現場の不協和音

価格戦略から見るとお店のオペレーション、コンセプトまで似ても似つかないもの同士の吸収合併といったところです。ローコスト・オペレーションを極めたチェーンストア展開する親会社と、ハイコスト・オペレーションでお客様の支持を集めている子会社としてチェーンストアが買収されました。当然、側から見てもこの会社同士の契約がよかったのか、どうかは想像がつくのではないでしょうか。

徹底した利益構造
メイン事業の根幹は商品製造のオペレーションから接客、清掃、顧客業者対応までをすべてワンマンでこなすシステムの中にあり社内文化、社員意識もすべてローコストに向かっています。ローコストを極めることで安くてもよい商品を届けようとして努力研究してきた歴史があります。ワンマンでならした経営者が貫いてきた現場たたき上げの方針です。決して否定されるべきことではまったくありません。そんな経営者の想いと企業の努力があってなりたっている社会も事実としてあります。

ただそんな社風の企業にとりこまれたハイコスト・オペレーションの飲食店チェーンでは、いずれ不協和音に包まれてしまうのは時間の問題だったのかもしれません。

ロイヤリティ志向
ブランドだけをロイヤリティ払いで拝借しようとしているかのように現場には伝わってきていました。ハイコストオペレーションの現場では人件費をかけてQSCを維持し続けています。QSCとはハイクオリティ(HighQuality)、グッドサービス(GoodService)、スーパークリンネス(SuperCleanliness)のことです。スタッフはいつもこの3つのコンセプトを念頭において作業を進めていきます。どの項目も人が対応していかないと実現できないコンセプトです。ここをコストとして削りとってしまうとお店の哲学が崩れてしまい、お客様にはもう何を提供しているのかがわからなくなってしまいます。

明らかに対立するコンセプト
お互いの事業を尊重しあって許容していけるのか、といえば相当難しいはずです。なぜなら明らかに力関係が発生してしまうからです。それは今まで培ってきたローコスト経営で稼いできた会社の利益をハイコストだからということで利益を吸収されてしまう事業を受け入れることができるのか、ということとなります。たとえ頭では理解できたとしても、数値を見れば感情的に拒否反応が出てしまうことも起こりえるのではないでしょうか。トップが下した判断には、社内で起こる拒否反応にまで配慮がなされていなかったのかもしれません。

当然、買収される方の事業、企業からも懐疑的な意見が出てくることが予想されます。そもそもターゲット層が違うので親会社の意向のプロモーションは実現不可能となります。よくある親会社からの出向ではありますが、現場のオペレーションが理解できずに親会社のやり方をコンセプトも違うのに当てはめようとしてしまいます。そもそもこれでは会社文化のミスマッチに対して予防も対策も打てないことになります。現場に負担をかけることでお店の崩壊を進めてしまっているかもしれません。打撃を受けるのはお客様だけでなく従業員スタッフにまでおよびます。

ローコスト・オペレーション VS ハイコスト・オペレーション

当然、現場には圧力が掛かり現状のオペレーションに手をいれようと試みられます。しかしながら元々米国のフランチャイジーだったものの買収でありマニュアル、その他ブランドのコンセプまで手をいれるのはムリがあります。そんな明らかなブランド毀損にまでおよぶ変更を試みようとしていることからも、お互いの理解は進んではいきません。本社からの出向メンバーのイライラと現場で培わられたオペレーションを巡って、あちこちの店舗でにらみ合いが続くこととなります。

お客様には別物として提示
ローコスト経営で急成長してきた事業とハイコスト、ハイコンセプトでなだらかに継続成長してきた事業を抱えて行き詰まってしまいます。両立は可能ですが、お互いが干渉し合わない環境での展開が必要です。ただしお互いの人的交流も難しくなり、お互いに独立した事業展開となっていきます。たとえば車のブランドならトヨタとレクサス、フォルクワーゲンとアウディなど別々の価値観でブランドを構築、展開しています。

なぜ、ミスマッチになるのか?

隣の芝が青くみえたから、といえるかもしれません。その後もローコスト経営がつづきましたが現場にたいして、あまりにも歪みが大きくそのブランド価値も毀損する結果となってしまったようです。結局は米国本社との契約満了にてそのフランチャイズチェーン店は消えていきました。ブランドへのロイヤリティを感じていたお客様を置いてけぼりにしてしまった結果、惜しまれつつ撤退となりました。会社同士のお見合いともいえるM&Aですが、やはり価値観は非常に大切な要素です。お互いに大火傷を負ってしまわないように、トップだけの思入れで判断することは避けたいところではないでしょうか。

片思いは通ぜず
このような結末を引き起こした原因は2つのブランドの価値を分けて考えられなかったからかもしれません。実はこの経営者が休日、お店に奥様と来店してカウンターで自ら注文していかれました。その時には、メニューをさして「これ(メニュー)は・・・」と商品説明を熱心にスタッフにされていたのが印象的です。本当はこのブランドが大好きで買い取ったのだろうと容易に想像できる出来事でした。

しかし2つのブランドを明確に分けて事業展開することが叶わなかったことの悲劇かもしれません。

好きだけではブランド価値を超えることはできなかったのかもしれません。

社内での勢力図そのものよりも現場の気持ちが離れてしまえば事業はそれまでとなります。

またメイン事業と新規事業でも社内ミスマッチが起こりえます。

それぞれのコンセプトを分けて考える方がよいのか、
現体制のままで受け入れてお客様が混乱しないで済むのか、
現場の意見を見過ごさないようにしたいものです。

PS
ワンマンでならした経営者なら今こそ気づく時です。
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