公開日:2017/09/30

「お試し」マーケティング戦略で成功する人、失敗する人

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これは、売上が伸びず、経営が安定しない年商1億円足らずの中小企業の成瀬社長が、自社を年商10億円の会社に育て上げるために、他社に圧倒的な差をつける秘訣と言われる「12の付加価値」とやらを求めて旅をする物語である。(フィクション)

2つ目の会社に向かう途中、マッサージサロンの前を歩いていると、若い男性から声を掛けられた。

「通常1万円の高級マッサージが、今なら初回無料ですよ。いかがですか?」

暑い中、歩き疲れて、そろそろどこかで休もうと思っていた成瀬は、「無料」と聞いて、思わず「じゃあ、試してみるか」と言ってマッサージサロンに入って行きました。

冷房の効いた待合室で説明を受けながら冷たい飲み物を頂き、その後、若い女性にガイドされるままに、90分のマッサージを受けて、元気が回復しました。

そのあと、お決まりのように、入会のセールスが始まりましたが、地域の住人でもない成瀬が入会するはずがありません。ただ、呼び込みにつられて入ったと言うのも悪い気がしたので、最近引っ越してきたばかりなので落ち着いたら、とかなんとか言って、資料だけもらってお店を出ました。

そのあと、約束の時間に、第2の目的地である株式会社トライアルの太腹社長を訪問しました。太腹社長は、きちっとした身だしなみの細面の紳士で、何事も計画的に遂行する、ちょっと堅そうな社長です。

面談の最初の雑談時に、近くのマッサージサロンで無料体験をしてきたことを話すと「あぁ、あそこのサロンなら知っていますよ。少し前から集客のために無料体験をやっていますね。でも、残念ながら、あれは失敗ですね。このままだと、潰れる時間が早くなりますね。“お試し”という付加価値の使い方が全然わかっていないから起こる悲劇です」と。

成瀬社長が「太腹さん、それはどういうことですか?詳しく話してもらえませんか?」と聞くと、「いいでしょう。あなたもそれを聞きに来たのでしょうから、お話ししましょう」と言って、太腹社長は話し出しました。
 

“お試し”付加価値とは.

“お試し”付加価値とは、私たちの身近なところでは

・デパ地下の試食
・化粧品や健康食品などの100円お試し
・新製品の街頭無料配布

など、その名の通り、見込み客に「お試し」してもらい、本商品・サービスを購入してもらうものです。

多くの人、特にシニア層や主婦層は「試しに使ってみないと怖くてお金を払えない」と思っていますので、この方法により購入に対する障壁を下げて、集客できるようになります。

また、“お試し”した見込み客には、無料で物やサービスを貰ったらお返しをしないといけないという気持ちが働く(これを「返報性の原理」と言います)ので、本商品・サービスを購入しやすくなるという効果もあります。

無名な会社や商品が一気に有名となる強烈な方法です。

ただ、使い方を間違えると、お金と時間の無駄遣いになるので、大抵の企業の“お試し”トライアルは『空振り』に終わっています。それはなぜなのか?

危険!これを知らないと“お試し”で身を滅ぼします

大半の企業や店舗は「他店がやっているから」という安易な理由で“お試し”を使っています。ですが、 “お試し”の目的は『有料の本商品・サービスを買ってもらうため』です。これをしっかりと認識していないから、間違いを犯してしまうのです。

無料、もしくは格安で“お試し”商品をばら撒いても、本来の目的である本商品の購入に繋がらなければ意味がありません。

ですから、“お試し”が有効に機能するためには、次の2つのどちらかを満足している必要があります。

・本商品の購入に繋がる動線がある

・“お試し”商品でファンになってもらえる

これらを実例を挙げて説明しましょう。

本商品の購入に繋がる動線がある

成瀬社長が経験したマッサージサロンを考えてみましょう。このサロンの本商品は「高額のコース」です。例えば、数万円から数十万円する6ケ月や1年コースです。技術的にはどこの店もたいしたことはありません。

ですから、自店の「独自のウリ」にぴったりの見込み客が、本商品を購入することを妨げる要因(物理的、精神的)を明らかにして、それを解消するために“お試し”商品を提供しなければなりません。

そういう意味では、まず、成瀬社長に声をかけた時点で間違いです。あの店に通えるはずがないのですから。また、施術前のカウンセリングでも、本商品を購入してくれるお客さんなのかどうかも確認する必要があります。

それから、本商品である90分コースを全て試させる必要があったかどうかも疑問です。「独自のウリ」を実感できる部分だけでも良いはずです。

そして、クロージングでは、見込み客の悩みや問題が解決できたのか?まだ不安要素があるのなら、それは何なのか?どのような選択肢があるのか(例えば、今ひとつ価値を実感できていない場合には1ケ月コースを勧めるとか)?などを話し合って、提案する必要があります。

このような、本商品の購入に繋がる動線がないと、“お試し”は全く意味がなくなってしまうのです。

“お試し”商品でファンになってもらえる

新商品を知ってもらって、継続的に購入するファンを作れるのであれば、“お試し”は有効です。

良い例で言えば、最近では定番となったエナジードリンクの『レッドブル』があります。様々な場所で無料で配って、ファンを獲得しました。

それまで、エナジードリンクといえば高額な『ユンケル』『アリナミンV』か、格安の『オロナミンC』の2極化していました。そこの中間にニーズがあると見込んで、認知率を上げるために無料でばら撒いたのでしょう。

この時は多額の費用がかかったのでしょうが、ファンになった顧客は、多少高くてもコンビニや自動販売機などで購入しているので、長期的に見れば大成功ではないでしょうか。

また、歌手が新曲を自分のメディアやYouTubeなどで無料で聞けるようにして、ファンを集めることなども、これに該当します。無料で流していたら、有料のものを購入しなくなるのではないか?と思われがちですが、ファン顧客は、気に入ったものは有料でも購入します。

このように、本商品と全く同じものを“お試し”させても、それでファンが集まり、本商品を購入してくれるという見込みがある場合には、この“お試し”は有効に機能します。

“お試し”で一番大切なこと

“お試し”で成功するためには、

“お試し”=セールスプレゼン、セールスレター

というマインドを持つことが重要です。

『無料や格安であげる』のではなく、あくまで本商品の購入に繋がる
・魅力的な商品やサービス
・欲しくなるセールストークやレター

が必要になります。

“お試し”商品が悪ければ、その後ろにある本商品は買ってもらえませんし、“お試し”がセールスでなければ、お客様は無料を楽しむだけです。

「無料だから適当なもので良いかな」というマインドは危険です。「“お試し”は本商品よりも優れたものを出す」「“お試し”に命を懸ける」くらいの気持ちで臨む必要があります。

それでこそ初めて“お試し”は威力を発揮するのです。

社員教育も大切

太腹社長の話を聞いて、“お試し”付加価値の要点を理解した成瀬社長は、太腹社長にお礼を言って部屋を出ようとしました。

その時、太腹社長は、「ところで、成瀬社長。“お試し”を成功させるには、もう一つ重要なことがあるんです。それは、社員にも、「何のために“お試し”をやるのか」ということをしっかりと理解しておかないといけないということです。そうしないと、あなたが行ったマッサージサロンのように、お金と時間を無駄にすることになりますよ」と笑顔で教えてくれました。

成瀬社長は、立ち止まり、「肝に銘じておきます。ありがとうございました」と言って、深々と頭を下げて太腹社長の部屋を後にしました。

株式会社トライアルを出た成瀬社長は、「ようやく2つ目の付加価値を理解したばかりだが、目からウロコの、非常に役立つことばかりだな。まだ、10個もあるんだ。益々楽しみになってきたぞ。よし次だ。次は“個別化”の付加価値が。どんな知恵が手に入るんだろう」と言って、次の目的地である「スペスリティ株式会社」に向かって歩き出しました。

P.S.付加価値<その1>はコチラ
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大胆な「保証」がライバルを引き離す

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